子牛が日々考えていること(妄想)を紹介します。創作童話やポエムの空間。

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ます

ます





河の水は青く澄んでいた。
水は命の源である。
様々な生き物が水を求めてやってくる。

鹿、カワセミ、たぬき、
彼らも水とともに生きている。

生き物は水なしでは生きられない。
人間もまた然りである。

そして、この男も河の恩恵を受けて生きている人間のひとりであった。
名前をヒコロクという。相模の人である。

ヒコロクは鱒釣りの名人であった。
名人と言われるには名人と言われるだけの理由がある。

秘密はヒコロクが作る「網」にあった。
この「網」、通称ヒコロクアミはヒコロクにしか作れない特殊な網であった。
この網を、これもまたヒコロクにしかわからないタイミングで河に放つとあっという間に大量の鱒が採れるのであった。

ヒコロクの噂は相模の国中に広がり、ヒコロクから鱒を買いにくる者があとをたえなかった。そしてヒコロクは金持ちになった・・・はずだったが、ヒコロクにはひとつ悪い癖があった。ヒコロクは夜になると、毎晩毎晩、女と遊んで金を使い果たしてしまうのであった。

「女なんて金さえ出せば簡単にひっかかる。鱒と同じでちょろいものだ。」

ヒコロクはそう思った。
そしてある女に赤子ができたことを機に結婚した。
女の名前はオリエといった。

結婚はしたが、ヒコロクの女遊びは止まらなかった。
しかし、オリエは文句ひとつ言わなかった。
ヒコロクにとっては実に都合のいい女だった。

ある日、ヒコロクが家に帰るとオリエが何か作っているのを見つけた。
何を作っているのか聞くと、鱒寿司を作っています、と答えが返ってきた。
食べてみたら、頬がとろけるような味が口の中に広がった。
オリエは、鱒寿司で商売したいと言った。
ヒコロクは許可した。

すぐにオリエの鱒寿司は評判になった。
味のよさに加えオリエの献身的な接客態度も好評だった。
オリエの鱒寿司を求めに駿河や武蔵野からはるばるやって来る客もいた。

オリエの鱒寿司は大繁盛だった。
一方、ヒコロクの夜遊びは止まらなかった。

ある日、オリエはある尊いお方に呼ばれて鱒寿司を届けに行った。
それは、なんと相模の国の領主である北条氏鷹であった。

相模中で評判になっているオリエの鱒寿司を一度食べてみたいと、氏鷹はオリエを呼び出したのであった。

ヒコロクはその日は昼間から遊びに出かけていた。
そして酒をしこたま飲んで家に帰った。

様子がいつもと違っていた。
何人かの見慣れぬ武士たちが駕籠を持ち家の前に立っていた。
高貴な方が我が家にやってきた。そう思った。
そして駕籠の中から婦人が下りてきた。
ヒコロクは土下座した。

「ヒコロク、面をあげよ。」

ははぁーーー・・・・うん?
聞き覚えのある声だぞ。
ヒコロクは恐る恐る顔を上げた。
なんとそれはオリエだった。

「オ・・・オリエ、おめぇ一体どうし」

武士のひとりがヒコロクの言葉をさえぎるとこう言った。

「相模守、北条氏鷹様の好意により、今からオリエ殿の鱒寿司は北条家公認の鱒寿司とする。そしてオリエ殿を鱒寿司店の店主とし、ヒコロクを番頭とする。以後ヒコロクはオリエ殿の命令をよく聞き、生涯オリエ殿のために働くように。なお、ヒコロクが釣り上げた鱒の権利はすべてオリエ殿が所有することとする。もしヒコロクがオリエ殿の命令に背いた場合は相模守様に逆らったも同然であるので死罪となすのでこれからは一層精進して働くように。」

番頭?店主?どういうことだ。
ヒコロクはオリエを見た。
オリエは、もうすでに主人が奉公人を見る目に変わっていた。

「ヒコロクこれからも私のためによく働くのだぞ。」

オリエが言った。

なんてこった、女なんてちょろいものだと思っていたが、女の網にかかったのは俺のほうだったのか。ヒコロクは思った。

河はいつも通り澄んでいた。
河の水の清らかさがヒコロクには眩しく思えた。
そして後悔した。

しかしすでにもう遅かった。
ヒコロクは観念して真面目に働くことにしようと思った。
その日からヒコロクは女遊びをやめていつもより懸命に働くようになったのであった。


なお、この話はフィクションであるので時代考証は一切無用である。
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プレゼント

みこ





引き続き、遠い昔の話。

戦は終わった。
人々は戦勝の報告を受けて喜びにあふれていた。
そんな折、槍の男が戦から帰ってきた。

この男は戦では大した活躍はできなかったが、大勝利だったために村人から歓迎され、嫁をもらうことになった。そして、ひとりの女の子を授かる。キミコと名づけた。

そして十四年の歳月がたち、キミコは美しく成長した。
あまりの美しさのために村人たちはキミコを巫女としてあがめるようになった。

ある者は鼻の下が三寸も伸び、
ある者はびっくりして屋根から落っこちてしまうほどの美しさだった。

自然と巫女には村人から贈り物が数々とどけられるようになった。
最初は遠慮していたキミコであったが、だんだんと貰ってもいいかなと思うようになった。

そして、何ヶ月・・・。
キミコの家には村人からの贈り物がいっぱいになったのだった。

時がたてば、人は変わるものである。
キミコのなかで次第に物欲が芽生えはじめた。
そして、村人の贈り物をもっともっと欲しがるようになっていた。

キミコは自分の美貌に自信があった。
それを利用してもっと取り立てようと思った。
自分に贈り物を贈ったものには特典として「キミコと握手ができるかも券」を配布した。
この「できるかも」というのが効果的だった。
キミコの美貌ゆえにできることで、村人は期待に胸を膨らませた。
キミコは村のアイドルになった。
そしてキミコは気がむいた時にしか握手はしなかった。

村人からの贈り物はますます増え、
キミコの家は大金持ちになった。
しかし、キミコの物欲はまだ収まらなかった。

「村人よ、もっと私に贈り物を届けるのだ。」

キミコはそう思った。

ある時だった。
ひとりのみすぼらしい男がキミコの前に現れた。
この男「みすぼらしい」という言葉が本当にぴったりくるほど、みすぼらしい男であった。
着ている服は所々やぶけているし、顔は埃まみれで黒ずんでいた。
そしてやぶれた服のなかから痩せ細った身体から血管や骨が剥き出しに見えた。
さすがにキミコもこの男から贈り物をもらう気にはなれなかった。
男は大きな鱒を持ってきた。
一日かけて釣り上げてきたようだった。

「どうかキミコ様、食べてください。」

そんな、自分が食べればいいのに。
キミコは思った。
食べなければ自分が死んでしまうんでしょう。

「わたしはキミコ様が喜ぶ顔を見るだけで満足ですじゃ。」

屈託のない笑顔だった。
キミコはその笑顔に衝撃を覚えた。

結局、キミコはその男からの贈り物は受け取らなかった。
そして、男のことを考えた。
その男はキミコが今までみたことのないくらい良い顔をしていた。
「純粋」という言葉がぴったりあてはまるくらいに良い笑顔をキミコに向けていた。
キミコは、今まで物欲に目がくらんでいた自分が恥ずかしくなった。

キミコは村を見渡した。
優雅な気分にひたっていたために、まったく気がつかなかった。
村はとても貧しくなっていた。

キミコは決心した。
今まで貰った贈り物を返せるものだけ、村人に返そうと。
だけど、普通に返したら格好悪いと思った。

そこでキミコは夜中にこっそり村人の家にまわり、玄関の前に贈り物を置いていくことにした。
誰から貰ったものかは、もうよく覚えてなかったので、適当に置いていった。

キミコはその行為に静かな喜びを感じた。

ある晩、キミコはまた村人の家の前に立っていた。
すると後ろから誰かに羽交い絞めにされた。

「泥棒め、つかまえたぞ。」

奉行所の役人だった。
キミコは奉行所に連れて行かれそうになった。

キミコは自分が泥棒じゃないことは確かだが、捕まっても当然かなと何故か思った。
今まで泥棒みたいなことをしてたからな。
その時声が聞こえた。

「まってください。」

見覚えがある顔が家から出てきた。
あの痩せ細った村人だった。

「お役人様、この方は泥棒ではありません。毎日こうやって貧しいものに施し物をもってくる尊い方なのです。」

必死に懇願する村人の熱意に押され役人は帰っていった。
そんな、私なんかのために・・・。
キミコはお礼をしたいと思ったが、恥ずかしくなって、走って逃げた。

とんぼの目

とんぼ





もうい~~かい。
もうい~~よ。

子どもたちの遊び声が聞こえてきますが、
これは、とおいとおい昔のお話でございます。

あるところに二匹のたいそう仲のよいとんぼがいました。
名前を「はね吉」と「とめ蔵」。
この二匹のとんぼたちの楽しみといえば人間の子どもたちと遊ぶこと。
なかでも子どもたちの指先にとまることが大好きなのでございました。

さて、今日もとんぼたちは子どもたちの指先にとまって楽しんでいました。
そして、日も暮れ、子どもたちが帰っていくと、とんぼたちは考えました。

「なにか、子どもの指先以外にとまって遊べるところは、あるかのう?」
「そうだな、明日の朝にでも探しに行くか、はね吉。」
「んだ。他にとまれるところがいっぱいあったら、楽しみもいっぱい増えるからのう。」
「んだ。」

翌朝、二匹のとんぼは、はりきって飛び回り、指の先に似たものを探し回りました。
まだ、日は昇ったばかりで、それは、それはおいしそうな蜜柑のように輝いていました。

まず、目をつけたのは稲穂の先でした。
今年は豊作でしたので、ふっくらとした稲が実って頭をたれていました。

「あれにとまってみるべ。」

はね蔵が言いました。
しかし、ふにゃふにゃであまりとまり心地はよくありませんでした。

「あんまり、よくねぇな。」
「んだ。」
「ほかのにとまるべ。」

次に目についたのは枝の先でした。
黄色のイチョウがまるで蝶々のようについていました。

「これはしっくりくるべ。」
「んだ、そうだなしぃっくり、くるね。」

二匹は、そこでしばらくゆっくりとしておりました。
しかし、すぐに落ち着きをなくしました。
カマキリが近づいてきたのです。
あわてて二匹のとんぼは逃げ出しました。

「枝はあんまり落ち着けねぇだな。」
「そだな。」
「お、あれ、おもしろそだべ。」

ぽとっ。
はね吉はとまりました。

「これは、案外居心地いいべ。」
「そっか、おらにもとまらせてくんろ。」

次にとまったのは百姓の頭の髷でした。

「おっ、なんかとまっただか?」

おや、百姓が気づいて手をのばしてきました。
はね吉はあわてて逃げました。

「いまいち、いいのがねぇだな。」
「んだんだ。」

その時でした。
ちょうど、朝焼けのきれいな光が反射して輝きをはなつものを見つけました。とめ蔵はとまりたくてしょうがなくなりました。

「今度はあれにとまるだよ。」

とめ蔵は言いました。
ところが、はね吉は何か胸にざわざわとするものを感じました。

「まてっ、とめ蔵、あれにとまったらいかん。」

とめ蔵は、もう、とまりそうになっていました。
そこに、ひょいっと人の手がでてとめ蔵をつかまえました。

「なんだ、おまえこんなところにのっかたら、お前、真っぷたつにさけるべ。」

とめ蔵がとまろうとしていたのは槍の先でした。
そしてその槍の持ち主によって、とめ蔵はつかまったのでした。

「ほら、お前どっか行け。」

とめ蔵とはね吉はあわてて飛んで行きました。
そして、男は後ろにいる老婆を見ると、こう言いました。

「おっかぁ、おら、いくさに行くだ。」

そして、男は日がさすほうに歩いていきました。

ヘビとカエル

ヘビと蛙






おまえ、何だよ、その顔。
オレはヘビだぞ、ヘビのオレがカエルのお前を食べてどこが悪いんだよ。
やめろよ、そんな顔するの。

・・・。
・・・・。

「ヘビさんはなんのために生きているか考えたことがありますか?」

なんだって?

「毎日、こんなことの繰り返しでむなしくないですかと聞いているんです。」

なにを言い出すんだこのカエルは。
まぁ、いいだろう話を聞こうじゃないか。

「ヘビさん、よく聞いてください。私たちは日々の生活に追われて生きていて、気づいたら、それが当たり前のようになっているのです。

考えてみてください。いつも思ってませんか?こんなんじゃないはずだ。こんなんじゃなくて、もっと別の何かを自分はすべきなんだって。

いつもいつも同じように寝て起きて食べて寝て起きて食べて。こんなことの繰り返しじゃないですか。なにか他にとても大事なことをすべきなんです。

そう今こそ立ち上がるべき時のはずです。今こそ寝て起きて食べて寝て起きて食べての繰り返しから自由になる時なのです。後でやろうとか思わないことです。そう思うとグズグズして結局いつものとおりになってしまいます。やろうとした瞬間がやるべき時です。さぁ、真の自由のために今こそやりましょう。私も自由を勝ち取るためにヘビさんに全面協力していく所存であります。ぺらぺらぺら・・・・・・。」


カエルはいつまでもぺらぺらとしゃべり続けた。
しかし、なんだろうこの感じは。
なにか、カエルの言うことに魅力を感じ始めた。

そうなんだよね。
食っちゃ寝て食っちゃ寝て、の繰り返しだったんだよ。
それでいいのかなと前々から思ってたんだけど、それ以外に生き方みたいなのがわからなかったんだな。

また、カエルがオレのほうをジッと見つめた。
オレは、カエルを放すことにした。

カエルはオレにひとつ会釈すると、「お互い、自由を勝ち取るためにがんばりましょう。」と言った。オレはうむっとひとつ相づちをうった。

空は青く晴れていて心地よいそよ風が流れていた。
オレの心は、そよ風のごとく安らぎに満ちていた。
とんぼが一匹とんでいた。
おまえは自由を知っているんだろうか。

その時だった。
目を疑う信じられない事件がおこった。


ぱくっ。


なんだって、あのカエルが。
さっきまで、オレに自由を語っていた、あのカエルが。

とんぼを食べやがった。


カエルはオレのほうを見て「しまった。」という顔をしていた。
オレのなかで再び何かが目覚める感じがした。

ユートピア

かえる





あの歌声は・・・。
ルシカル様・・・。
わたしの愛しのルシカル様。


ケロロンケロロン♪
あなたにケロロン♪


聞こえてくるわ、愛のメロディー。
行きたい、
会いに行きたい、
愛しのルシカル様。

だけど、ひとつ問題があるの。

わたし、
じつは、

方向音痴なの。

だから、だから、歌声のほうに行こうと思ってても、
思ったとおりの方向にいけないの。

いくらがんばってもダメだった。
それで、ルシカル様の歌声を聞くたびにせつなくなるの。

ああ、会いたい。
会いたいルシカル様。
あなたに会うためにどうしたらいいのでしょう。

今日も歌声のほうに行こうとしているんだけど、
行けば行くほど歌声が遠ざかっていくの。
なんでなのかわからないの。

教えて、教えてお月様。
ああ、迷いは罪。

水がきらめきお月様がうつる。
わたしはしばらくそれに見とれてたの。

もう忘れるわ。
あきらめる。
きっと会えない運命にあるのね。

あきらめて家に帰ることにしたの。
とぼとぼと。

そうしたら、びっくりしたの。
これはなんていったらいいだろう。

歌声が近くにやってきたの。
ルシカル様がやってきたの。

奇跡は忘れた時にやってくる。
嬉しくてルシカル様のところに飛び跳ねて行ったの。

牛飼いソーニャ

牛飼い





雲が流れていた。
それらは集まり、やがて雨雲となり雨を降らした。
大地は雨を吸い始める。
まるで、人がのどを潤すように。
大地が吸収した水分の恩恵を受けるのは植物たちだ。
彼らも夢中でのどを潤す。

やがて雨雲がなくなり太陽が見え始めた。
草についた水滴がきらきらと光っていた。
それを、一頭の牛がぺろっとなめると、草を、はむっと食べた。

「行くぞ、モー吉。」

牛飼いの少年が牛にそう言った。
しかし、牛は動かなかった。
そしてまた草を食べ始めた。

「もう行くぞ、モー吉!!」

少年は牛をひっぱって無理やり連れて行こうとした。
牛はふんばって絶対に動こうとしなかった。

しばらく少年は力任せに牛をひっぱり続けた。
ひっぱればひっぱるほど、牛も必死にふんばった。

太陽のひかりが少年の頬を照らした。
汗がひとつふたつと流れ落ちた。

いくらひっぱってもダメだった。
疲れたので少年はひっぱるのをやめて、野原に腰をおろした。

すると牛はまた、はむっと草を食べ始めた。
雨でしばらく外に出れなかったから、今こうして外の草を食べれて嬉しいんだろうか。
少年は考えた。

しょうがないので食べ終わるまで待つか。
地面がぬれているので座ることもできず、仕方ないから立ちながら歌でも歌って待っていることにした。

るるるーーー♪
るるるるーーー♪

歌っているうちに少年は楽しくなってきた。
それでずっと歌っていると少年は牛のことを忘れた。

そよ風が心地よく少年の髪をなでた。
遠くでカエルの歌声も聞こえた。

ケロロロ♪
ルルルー♪

合唱しているみたいで面白かった。

もーーー。

いつの間にか牛が少年の横にいた。
はやく行こうよと言わんばかりに少年の服の裾を牛がかんでひっぱった。

「よし、じゃぁ行くか、モー吉。」

少年は歌を歌いながら帰ることにした。

おとしもの

星に願いを




いつもと変わらぬ山道をオレは車で走っていた。
その日は仕事で嫌なことがあってむしゃくしゃしてたせいもあるのか、少しスピードをだして運転していた。

そして操作を誤って、

崖に落ちた。


気がついたら、ひとりの少女がオレの前に立っていた。
そして、両手をかざしてこう言った。

「あなたは大切な落し物をしました。それは、あなたの命です。あなたは自分の命を拾わなくてはいけません。ここにふたつの命があります。選ぶのはあなたです。」


少女の右手の上にぼんやりと銀色の球体が浮かび上がった。
「ひとつは、体を自由に動かせるけど、心が自由ではない命。」

少女の左手の上にぼんやりと金色の球体が浮かびあがった。
「もうひとつは、体を自由に動かせないけど、心が自由な命。」

「どちらかを選んでください。」


なんだそれは、体が不自由なら心も不自由になるんじゃないのか。
そもそも自由ってなんだ。

少女は目をつぶったまま黙っていた。
音はいっさいなく、静かだった。

体の自由と心の自由。
どちらが大事かなんて考えたこともなかった。

体が動かせないということは、自分がやりたいこともろくにできなくなる、仕事もできなくなるということか。
やっぱり体が動かせなければ、心も不自由になるのではないのだろうか。

しかし心が自由だとしたら、どうなんだろう。
想像もできない。
いままでのオレの心は自由だったんだろうか。
そんな気はしない。


オレは金色の球体を選んだ。


また崖に落ちる車の中にいた。
死んだなと思った。
落ちながら、夜空の星が美しいとなぜか思った。


その瞬間、不思議な感覚に襲われた。
自分の体がふわりと浮かび上がって、
心が何かに溶け込んだような気がした。

死を受け入れた瞬間に、心が何かとひとつになった。
本当に不思議な感覚だった。

気づいたら病院だった。
体は目と口以外、動かなくなった。
生きていること自体が奇跡だと言われた。
本当にそうだと思った。

あの少女が言うとおり、オレは体が不自由になった。
だけど、後悔はまったくなかった。

窓をながめると雲が一筋ながれていった。
それを見ながらオレは生きていることを実感した。
プロフィール

子牛

Author:子牛
ようこそいらっしゃいました。
大人向けの創作童話を作っています。
よかったらみてください。
ありがとうございました。

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